*...*...* Loving *...*...*
薄暗闇に慣れた目には、波紋のように しわの寄ったシーツと、白い隆起だけが見え隠れする。時折、その無彩色の中に朱が混じる。
香穂子の唇と、胸の先。
それと、俺を優しく受け入れている場所。
「ねえ。香穂子。分かってる?」
「やっ。あ……っ」
「お前にこうするのは俺だけってこと。……他の誰も許さないよ」
「どうして……、そんな」
浅く深く腰を揺らしながら、香穂子を追いつめていく。
好き、という言葉で括れる気持ちではなくなっていることを知っている。
愛してる、という言葉でも足りない気がする。
── どうしてなんだろう?
俺は自分の戸惑いに自問する。
その答えを求めるかのように、俺は香穂子を壊して。乱す。
香穂子に対しては他の誰にもこんなことをさせやしない。
ぴくりと中が締まるのを感じて、俺はさらに最奥を突いた。
「おや? 俺に絡みついてきてるのはどうしてかな?
……今、お前、誰のことを想像したの? 火原? それとも加地? 月森かな……?」
「強く、しないで……っ。壊れちゃう」
「……壊してるんだよ。俺が、ね?」
手近にあった、枕を香穂子の腰の下に押し込む。
香穂子の一番弱いところが露わになる。
香穂子はもはや、隠す余裕もないのか、繋がったまま半身を起こした俺を、とろんとした目で追っただけだった。
薄紅色の肉に覆われている突起をそっと取り出す。
男の身体にはないもの。大切に扱ってやらないと、壊れてしまいそうなほど繊細で。
だけど、大切に扱ったら、それはそれで、新たな権力を持ちそうな気もする。
「── 綺麗だよ。朱く腫れて、光ってる」
「……ん……っ。や……っ!!」
親指の腹でゆっくりと弄ぶ。そのたびに香穂子の身体は大きく揺れる。
── ぞくぞくと背中を這い上がっていく快感。
そう。香穂子のこんな顔が見たかったんだ。
俺自身を身体の中に埋め込んで、快感に追いつめられていく、こいつの顔が。
「先輩……っ。一緒に、ね? 一緒がいい」
「待てないの?」
「ダメ。もう……っ」
俺は再び腰を折ると、ひくひくと生き物のように波打っている香穂子の中を突いた。
新たなフレーズがやってくる。
その波に、香穂子を乗せて。追いかけるように、自分も乗る。
「じゃあ、言ってごらん? 俺が欲しい、って」
「え? は、恥ずかしいから、や、……っ」
「へえ。まだ、恥ずかしい、って感じる余裕、あるんだ?」
香穂子の息が上がる。
俺を求めて、震える腰。
もし、お互いを感じている瞬間に生が終わるのなら、それも悪くない。
「香穂子。……いいから、素直になっておいで」
俺は、肩で息をしている香穂子の唇を自分のそれで覆った。
「以前、話したことがあるだろう。俺は子どもの頃から品行方正で遊んでない、って」
「はい……」
「知ってた? そういう人間は大人になってから遊び尽くすんだって。子ども時代の分も」
「…………」
「── 香穂子は、俺の遊び相手になってくれるんでしょう?」
訳が分からないながらも、俺の言うことがうすうす 理解できたらしい。
香穂子は、つ、と、窓の外に目を逸らした。
── やれやれ。
何度も抱いた女の子がこんなに愛しい存在になるってこと。
……俺は香穂子に会って初めて知ったよ。
「ずっと。……ね?」