*...*...* 眠っている君の横で(葉月's Side) *...*...*
温かい吐息としなやかな指が、首筋に触れる。……ん? なんだ?
……いつもそこにあるだけで、安心する香り。
……ああ、なんだ。おまえか。
薄目を開けておまえを見る。
おまえはそんな俺に気付く風でもなく、
俺の頬を撫ぜながら、窓の外の景色を眺めていた。
なあ、。
おまえは知らないだろうな。
おまえと再び会えて、こうして、唯一無二の存在になれたことを、
俺がどんなに感謝してるかってこと。
言葉ではなかなか上手く伝えられずに、時にはひどい愛し方をしたこともあった。
子供じみた独占欲で、束縛してしまったことも。
普通の女なら逃げ出すだろうな。
でもおまえは、いつも笑ってこう言うんだ。
「大丈夫。私はずっとここにいるよ……」
その言葉に、態度に、どれほど救われただろう。
おまえと二人で歩いて行く。
そう思った瞬間、身体中が温かいものに包まれたんだ。
……これで、もう、明日から独りじゃないんだな。
いつも守ってやるべき家族ができたんだな。
俺がおまえを上手く愛していけるか、正直なところ不安だけど。
昨日二人で照れながら書いた紙……。
そのときの想いを、ずっと育てていこうな。
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再度薄目を開けて、おまえの顔を見る。
ん……? おまえ、何泣きそうな顔してるんだ?
不安になって、いきなり顔に触れている手を引いてみる。
ああ、良かった。俺の横にいるのは、確かにおまえだよ、な?
おまえを泣かしている感情が、なんなのか知りたくて、
何度か聞いてみたけど、あっさりとかわされて。
その代わりに返されたモノは、無邪気に笑う、極上の笑顔。
……まいった、な。
。
俺、もう、おまえを離なす気なんてないから。ずっと。
覚悟、しとけよ。