*...*...* 眠っている君の横で(葉月's Side) *...*...*
 温かい吐息としなやかな指が、首筋に触れる。




 ……ん? なんだ?
 ……いつもそこにあるだけで、安心する香り。




 ……ああ、なんだ。おまえか。
 薄目を開けておまえを見る。


 おまえはそんな俺に気付く風でもなく、
 俺の頬を撫ぜながら、窓の外の景色を眺めていた。





 なあ、
 おまえは知らないだろうな。

 おまえと再び会えて、こうして、唯一無二の存在になれたことを、
 俺がどんなに感謝してるかってこと。



 言葉ではなかなか上手く伝えられずに、時にはひどい愛し方をしたこともあった。
 子供じみた独占欲で、束縛してしまったことも。

 普通の女なら逃げ出すだろうな。

 でもおまえは、いつも笑ってこう言うんだ。



「大丈夫。私はずっとここにいるよ……」



 その言葉に、態度に、どれほど救われただろう。




 おまえと二人で歩いて行く。

 そう思った瞬間、身体中が温かいものに包まれたんだ。

 ……これで、もう、明日から独りじゃないんだな。
 いつも守ってやるべき家族ができたんだな。


 俺がおまえを上手く愛していけるか、正直なところ不安だけど。


 昨日二人で照れながら書いた紙……。
 そのときの想いを、ずっと育てていこうな。




####




 再度薄目を開けて、おまえの顔を見る。

 ん……? おまえ、何泣きそうな顔してるんだ?
 不安になって、いきなり顔に触れている手を引いてみる。



 ああ、良かった。俺の横にいるのは、確かにおまえだよ、な?

 おまえを泣かしている感情が、なんなのか知りたくて、
 何度か聞いてみたけど、あっさりとかわされて。

 その代わりに返されたモノは、無邪気に笑う、極上の笑顔。


 ……まいった、な。




 
 俺、もう、おまえを離なす気なんてないから。ずっと。




 覚悟、しとけよ。




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