*...*...* Sweet *...*...*
夏休み。2週間ぶりに俺の家に遊びにきたは、以前にも増して元気になっていた。
「……入れよ」
「うん! 先週は来られなくてごめんね。お邪魔しまーす」
俺はクーラーがほどよく効いた俺の部屋へを通してから、再び階下に戻ると飲み物を用意する。
カラン、とグラスの底にぶつかる氷の音が気持ちいい。
飲み物に入れる氷を用意しておく。
あいつが俺の家に遊びに来るようになってから、やり始めたことを挙げろと言われたら、氷を常備するようになったこと、かもしれない。
自分だけのときは使わないから、氷はまだ半分以上残って、冷凍庫の中で主人顔して場所を占めている。
けど、いい。それで。
この氷がある間は、は俺の家に来てくれそうな気がする。
そう考えて軽く首を振る。
なくなれば、また、買えばいいんだ。
俺が部屋に戻ると、は、ソファベットの端に浅く腰をかけていた。
「わ、ジュース、ありがとう!」
「ジュースくらい、は、な?」
自宅前で、こいつが遊びに来ると俺はいつも同じことを言う。
『ジュースくらい出してやる』
照れと、嬉しさと。
俺の中でいつもごちゃまぜになるから、こんな減らず口を利いてしまう。
「あはは。ん。暑いから冷たいモノ、美味しいよね」
いただきます、と、はテーブルへ手を伸ばす。
すんなりとした腕が、目の端を横切り、水色のキャミソールのレースが揺れる。
日が当たったこともないような白くて瑞々しい二の腕の内側が露わになる。
── どきり、と耳元で鼓動が聞こえたような気がした。
一度は触れたことのあるあいつの肌。肌理が細かくて、良い香りがして。
初めて抱いたあの日から、何度も思い出していた肌。
は俺の思惑に全く気づきもしないで、こくりとジュースを一口、喉奥に流し込んだ。
「ね、珪くん。もうすぐ新学期だね。わたし、修学旅行、すごく楽しみなの。風邪なんて引いていられないよね!」
「……修学旅行?」
「そう! って、あれ? 珪くん、もしかして、知らなかった……?」
「ああ」
はバツの悪そうな表情をして俺を見上げてくる。
……って別におまえが悲しそうな顔しなくてもいいんじゃないか?
「そっかぁ……。じゃあ、行き先も知らないよね? 三択にしてあげよっか」
「……まかせた」
「じゃあね、えっと……。問題、出すよ?」
大きな目をくるりと輝かせて出したの三択は、とんでもない代物だった。
1番の『京都・奈良』はともかく、2番の『ラスベガス』、3番の『宇宙』って……?
は自信いっぱいの笑顔で微笑んでいる。
「……本気で?」
「そう。難しいでしょ? 珪くんわかる?」
「…………」
はくすくす笑いを零しながら俺の顔を見上げてくる。
これじゃ全然三択の意味がない。
それにいくら私立高校だからって言って、宇宙に行けるほど資金があるとも思えない。
ラスベガスに至っては、氷室先生辺りが一番に反対しそうか……。
いや、案外カジノが『確率』の勉強のためになる、とか言って推奨するかもしれないな。
「えっとね。答えはね、京都・奈良だよ〜。すごく楽しみなの。珪くんや奈津実ちゃんたちと一緒に行けるんだもん。
着ていく服は制服とジャージって決まってるけど、他にもいろいろ準備しなきゃね。
小学生の時、遠足って言うと、準備しているときがとても楽しかったもん」
「……そうか」
正直言って、俺はそれほど修学旅行を楽しみにしているわけではなかった。
団体行動はあまり好きじゃない。しかも4日間だ。
きっといろんな行程を立て過ぎて、ゆっくりする暇もないだろう。
けど、こいつが。
胸の前でグラスを両手で抱えて、嬉しそうに目を輝かせてるのを見ると、こっちまで嬉しくなる。
── 幸せの、連鎖。
「俺はそれほど楽しみじゃない、かもな」
「え……?」
俺はからかうような口調で、反論すると、途端にの眉毛が寂しそうに下がる。
そんな風にすぐさま俺に反応してくれるこいつが更に愛しくなる。
「ど、どうして?」
「いつもの授業より、睡眠時間が減る。……それに」
「それに?」
「……人前じゃこういうこと、できないだろ?」
「ん……?」
俺はが抱えているグラスを取り上げてテーブルに置いた。
そして水気を含んでひんやりとした指を掴むとゆっくりと指を這わせた。
は俺の突然の動作に目を見開いて手を引こうとする。
俺は細い指を握りしめ、その先を口に含んだ。
「……おまえに触れたり、可愛がったりすることが、な」
初めは奪うことに不安があった。
好意の先の行為が、結果としてこいつを傷つけ、俺を強引な人間だと嫌う一因になったとしたら──。
考えるだけでも俺は一体どうしたらいいのか、とやるせない気分に陥った。
けれどいつしか求め合うことが当たり前になって。
いつかは、求め合わないないことが、淋しいと思えるようになればいい。
── 今の俺は既にそうなってる、から。
たとえば、触れる、ということ。
例えそれが手の平であっても、唇であっても。
初めて触れたときには、かすかに震えていた。
こいつなりの力で、俺の胸板を押し返したりもしていた。
ベットの上、キャミソールをたくし上げ、胸への愛撫を繰り返す。
そのたびに白い肌が羞恥で桃色に染まるのが見える。
俺の手に吸い付くように湿り気を増す肌が、俺をもう一つ先のステップに進ませる。
そして、たとえばキスをする、ということ。
かすかに付いているグロスを舐めて、こいつ本来の艶やかな薄桃色の唇が出てくる。
ぷくりと弾力のある膨らみの感じに触発されて。
俺はの後頭部に掌をまわし、内部の歯列を味わいながら繋がりを深くしていく。
深く繋がれば繋がるほど、愛しさが増す。
「……。力、抜いて」
俺の腕の中にすっぽりと入り込んでいるは、行為の内容を知ってしまったための恐怖なのか、初めての時よりも頑なな力が身体中に及んでいる。
「怖い、か?」
固く締められた脇。脚。
ほっそりとした肩が時折ぴくりと震えを帯びている。
「ううん? ……大丈夫」
あいつの震えを止めたくて。でも止まらなくて。
俺は顔中に唇を落とす。どこかに震えの原因があれば、見つけ出して掘り起こして、静かに俺の手で止めてやりたいと願う。
「あ、あの……。これは珪くんのことが嫌いだからじゃないの。慣れてないだけ、だから。ごめんね」
必死に、いつもとは違うかすれた声が耳元でする。
「だから……。続けて?」
はそう言って俺を安心させるかのように、耳の付け根に軽くキスをした。
強いよな、こいつは。
小舟のように俺の中をさまよいながらも、最後には、俺まで飲み込んで。
きっと終わった後には、何色にも染まらずに漂い続けてるんだ。
を安心させるようにと、軽くの無防備な胸を軽く撫で、一旦身体を離した。
そして光が満ちている西側の窓のブラインドを下げてから俺は再びベットの端に座った。
そしての胸の隆起に手を這わせ、視線は離さないまま、淡々とした動作で俺は服を脱ぎ捨てていった。
は自分の胸に置かれている俺の手を上から覆って、怯えたような表情で俺を見つめる。
そんな顔までも煽られると言ったら、こいつはどんな反応をするだろう?
(壊しそうだ)
もどかしいまでの思いが指先まできている。指は白い肉の中に入り込み、赤い実が立ち上がってくるのが分かる。
俺は肩に引っかかってるのキャミソールを取り、下着を剥がした。
少しでも時間をおかなくては……。
俺自身が暴走するのが目に見えている。
は、涙目になって不安そうに俺を見上げてくる。
俺が裸になっていくのは直視できない。けど、自分もどうしていいかわからない、……といったところか。
「ね、珪くん。……どうして人は大人になるとこんなことするんだろう?」
「?」
「ん……。珪くんがすごく近くにいてくれる、っていう感じは嬉しいんだけど……」
女は、最初から快感がある男とは違うのかもしれない。
受け入れる性である以上、不安も男より大きいのだろう。
不安とたゆたいの中で、苦痛を伴う行為を何度も経て。
「なんだか怖いよ。だんだんわたしがわたしでなくなっちゃうような気がするの」
「……こんな風に?」
俺は指に触れている赤い実をこちらに向けた。
押し上げるようにして膨らみを持ち上げる。
そいつはまるで場違いなところに現れたようなきょとんとした表情で俺の目の前に飛び出してきた。
「わたし、ヘンじゃない? 普通、かな……? ……っ!?」
俺はの両手を頭の上で一括りにすると、飛び出してきた赤い突起を口に含んだ。
「……よく見える」
「珪くん!」
「おまえの恥ずかしがる顔も、可愛い胸も……」
「やめて、恥ずかしいよ」
「この前は夜で見えなかったから。……見たい、全部」
俺はの身体中の曲線を確かめるように唇を這わせていった。
初めて抱いたときと同じ。記憶の中よりも可憐なこいつが手の中にいる。
は時折ぴくりと身体を揺らすものの、唇を落とすたび、手を離そうという力は徐々に消え失せ、切なそうなため息へと変わっていく。
(……たまらない)
柔らかくて、感じやすくて。
俺の指一つ、たった一言で、こんなにまで反応してくれる。
こんな可愛い生き物を、俺は知らない。
もはや俺の腕を解いても、の身体はほとんど動かない。
淡いピンクのプリーツスカートが、腰の辺りに巻き付いている。
俺はの腰を軽く浮かせると、用を成さないほど濡れそぼった布きれと一緒に取り払った。
は腰に触れたとき、少しだけ眉を顰めて。
けれど何もかも俺に委ねたような、子どものような表情で俺の動作を見守っていた。
「きれいだ……」
生まれたままのの肢体が、桃色に息づいて眼下にある。
「言ってみろよ。……この身体のどこがヘンだって?」
真夏の真昼の日差しが、カーテンを通って、柔らかく室内に満ちている。
うっすらと汗をかいたの身体は、窓からの光を反射して、まぶしいほどの輝きを放っていた。
少女のようなたおやかな胸。引き締まった腰。
なだらかな腰の曲線。終端には微かな茂みが待ち受けている。
俺はさっきスカートを取り去ったときのように、の脚の間に割り込むと、華奢な腰を抱え込んだ。
「珪くん?」
「……感じて? 」
「なに……? ……あっ!……・っ」
俺はの脚を大きく広げ、中心で赤く咲き誇っている花弁を舌で押し広げていった。
朱い花弁の奥には、熟れきった果物のような小さな突起が潜んでいる。
俺は突起を口に含み優しく舌で舐め続けた。
「い、いや……っ。あつ、い……」
は無意識に背中を捻らせてずり上がる。
逃がすものかと俺はの腰を抱え込む。
ぷくりと突起が膨らみを帯びてくると、止められなくなった蜜がさらさらと俺の脚にこぼれ落ちた。
は見えない熱に突き動かされてるかのように翻弄され続けている。
の声に終焉を感じた俺は、の腰から揺れ続けている2つの赤い実に手を伸ばした。
(どうしてこんなに愛しいのだろう)
の行き着く先に答えがあるような気がして、俺は目の前の熱を持った突起を咀嚼する。
突起が起こす熱。それが全身に広がって。
は鋭く泣き声を上げたあと、身体中が弛緩した。
「もう、珪くん。……こんなことするなんて……」
「好きだったらするの当たり前だろ」
「……身体が飛んでっちゃうかと思った……」
は、眦に涙を残したまま、恨めしそうに見上げてくる。
快感よりも羞恥の方が大きいのだろう。大きく肩で息をしている。
俺はを抱き寄せて、呼吸が落ち着くのを待った。
「……よくしてやりたいって思うんだ」
「珪くん?」
「……おまえが女で良かった、って思えるように」
初めて抱いたとき、『女の子で良かった』と囁いた。
『こうして珪くんに抱いてもらえるでしょ?』
独り寝の夜、何度も浮かんで消えた言葉。
抱くという行為は、心身ともを傷つけただけではないのかと自己嫌悪に陥るたびに、心の拠り所になってきた言葉だった。
辛そうなの顔を思い出すたびに、考えていたこと。
痛みだけを与えるのではなくて。
二人で引き起こす快感を、二人で分け合いたい、と。
「……おいで」
俺はゆっくりとを抱き起こすと、膝の上に乗せた。
本当にはきれいだった。
肌は白く薄く。
頬や耳、胸などの先端は桃色に色づき。
二の腕の裏以上に、一度も日に当たったことのない胸の膨らみの下などは白さを通り越えて青い血管が透き出て見えた。
俺は自分の起立したものの上へとをいざなった。
は自分がどういう体勢で結びつくのかを把握したのだろう、怯えたようにかぶりを振る。
「……だめ。できないよ」
「ゆっくりでいい。……おいで?」
の手を取り、肩に回させる。
そして腰を引き寄せて。
俺は朱で染まった桃のような臀部を手に納めた。
すべすべした桃を軽く揉みしだくと、それはにとっては思ってもみない刺激だったのだろう。
ピクンと腰が大きく揺れ、思いがけず俺の先端を埋めることになった。
「……っあ…っ」
どうしたらいいの? と身体中で戸惑っているのがの中から伝わってくる。
でも自身の体重はの自由を奪って。
俺の起立したモノはが身動きするたびに、埋め込まれていくのが見えた。
「……ああっ」
圧倒的な充足感。
俺が少しでも気を抜いたら、あっという間に押し返されるか、達してしまうかのどちらかだろう。
初めての時のような痛みはないものの、やはりまだ少しは辛いのか、は俺のを全部受け入れるとそのまま動くことなく身体を寄せてきた。
「珪……っ」
「……愛してる」
── 好きな女を抱く、というのはこういうことなのか。
受け入れてくれるこいつが愛しい。
感じているこいつを見ることが嬉しい。
心の中の貪欲な自分が吠える。もっと、と、ねだる。こいつを満たし、満たされたいと念じる。
俺はの背に手を這わすと、突き出された胸の間に顔を押しつけた。
「珪くん?」
不思議な感覚だな。
興奮のまっただ中にいるのに、こんなに安心できるなんて。
「……辛くないか?」
「ん。平気。……珪くん、優しいから」
は細い腕で俺を抱きかかえて、笑っている。
俺は抱いている最中に、初めての笑顔を見たような気がした。
俺はの背中に手を回し、小さな身体を支えると、そっとベットに縫いつける。
もっと知りたい。
今まで俺が見たことがなかった女の表情を。とぎれとぎれに響く切なそうな声を。
── 抑えられない。
俺はの膝裏に腕を通して。
緩やかに弧を描くように腰を揺らすと、の柔らかな身体は加速度を増して溶けていった。