*...*...* 遙かなる時空の中でwith十六夜記愛蔵版 マル秘龍神温泉 *...*...*
(あまりに面白かったので、テキスト化してみました。
 文字の羅列だけではおもしろさは伝わらないかも、と思うのですが、そこは妄想力で補っていただけたらと思います。
 ではどうぞ!)




敦盛:(王様とは1つ。王を尊敬、または親しんで呼ぶ呼び方。2つ。その方面でもっとも権力のある者のことを指す)
弁慶:「遙かなる時空の中でwith十六夜記愛蔵版。マル秘龍神温泉」



全員:「せーのっ。王様だーれだ」

ヒノエ:「なんだよ。オレ、全然王様からハズれてるぜ」
九郎:「俺もだ。そろそろ当たるかと思ったがな。それで今回は一体、誰が王様なんだ?」
敦盛:「…私だちゅう
譲:「だちゅって…。そんなんで次の命令まで赤ちゃん言葉を続けられるのか?」

景時:「んー。でもなんか、よかったよね。今度の王様が敦盛くんで」
弁慶:「他に誰か王様になるとまずい人でもいるんでちゅか?」(黒)
景時:「え? いやいやいやいやっ。そういうわけではないよ。断じて」(汗)
弁慶:「そうでちゅか。ともあれ敦盛くんに早く命令を出してもらって、この言葉遣いから解放されたいでちゅね」

ヒノエ:「2人とも、せっかく赤ちゃん言葉似合ってるのに、もったいないね。姫君たちが来るまでそのままでいればいいんじゃない?」
弁慶:「いやだな。そんなことをして彼女たちにヘンな目で見られるのはごめんでちゅよ」(さらりと)
敦盛:「ヘン…。そうか。さきほど王に命じられたこれは、ヘンな言葉遣いだったのか」
将臣:「おい、敦盛。肝心の命令は」

敦盛:(そうだ、命令。みなが私の命令を待っている。しかし、何を命ずればいいのか。
 ああ、神子の世界の遊技はなんと過酷なのだろう。そもそも我々はなぜこんな遊技を始めたのだろうか)


景時:「ふぅ。いいお湯だったねえ。温泉、サイコー!」
譲:「でもちょっと早く上がりすぎたかな。先輩たちは、まだみたいだ」
ヒノエ:「だけどこうして姫君たちの湯上がりを待つのもいいもんだろう? もうすぐ頬を上気させた濡れ髪の乙女たちが現れる」

譲:「濡れ髪の、先輩…?」(赤面)

弁慶:「おや? 譲くんは湯あたりでもしたんですか?頬が赤いようですが」
譲:「いえ、何でもありません」

将臣:「しっかし。あいつらはまだまだ出てきそうにないぜ。ヒマができちまったな」
景時:「なにか時間をつぶす方法あればいんだけど。こういうとき君たちの世界じゃどんなことをするんだい?」

譲:「そうだな、普通はトランプとかかな」
白龍:「とら。んぷ?」
九郎:「虎となにか関係のある遊びか?」
将臣:「ないない。全然無い。第一、今からトランプなんか用意してたら日が暮れるぜ。
 温泉旅行のヒマつぶしと言ったら定番はこれだろう」

弁慶:「なんですか? それは」
景時:「ん? 切った紙に書かれた数字と、王という字?」
譲:「まさか」
将臣:「当然、王様ゲームだ」
九郎:「王様?」
白龍:「げえむ?」

譲:「それのどこが温泉の定番なんだよ」
将臣:「今すぐできる。スリルもある。短い時間で1回遊べる。うってつけだろ?」

ヒノエ:「へぇ。面白そうじゃん」
弁慶:「まずは説明を聞いてみるのもいいかもしれませんね」
景時:「ああ、それなら向こうで涼んでいる敦盛くんとリズ先生を呼んでこよう」

敦盛:(将臣殿が言うには、王と書かれた紙を引いた者が、命令を下せるということだった。
 王の下した命令は絶対だ。それで最初の王になったのはリズ先生だった)

リズ:「みんな、健やかに過ごしなさい」

敦盛:(ただ、この命令は遊技の趣旨とは違っていたらしい。みなが一斉に脱力していた。次の王は譲だった)

譲:「喉も渇いたし、2番と5番の人に水を運んできてもらおうかな」
ヒノエ:「何でオレが野郎なんかのために…」

敦盛:(ヒノエは文句を言いながらも弁慶殿と共に水をくみに向かった。命令は絶対なのだ。次のゲームは景時殿が王だった)

景時:「ようし。じゃあ、7番の人に肩でももんでもらおうかな」
弁慶:「そうですか。ふふっ。仕方ないな。これも薬師の仕事の一環ですよね」

敦盛:(弁慶殿の指圧が上手かったのだろう。景時殿は涙を流して喜んだ。
  命令を受けた者は、王が満足するだけの結果を出さなくてはいけない。
  次の命令、赤ちゃん言葉もそうだ。見事責務を果たしている弁慶殿はさすがだ。
  私も責務を全うしたいが、未だ上手く話せずにいる。こんな私に王として、何かを命ずる資格などどこにあるというのか)

九郎:「敦盛。命令は決まったか?」
敦盛:「いや。すまない。どうしても考えつかないのだまちゅ
譲:「だまちゅ! 相当混乱してるな」
弁慶:「困りまちね。敦盛くんが命令を言ってくれないと、ずっとこのしゃべり方のままなんでちゅが」

景時:「じゃあ、ここはいったん保留にして次に進もうよ。敦盛くんの命令は思いついたときに言ってもらう、ってことにしてさ」
リズ:「良い考えだ。王としての正しい判断には、休息が必要だろう」
九郎:「命令が決まった時点で言ってくれ。じゃあ次の王を決めるぞ」
白龍:「それじゃ、みんな行くよ」

全:「王様、だーれだ」

弁慶:「んふふふっ」
将臣:「ど、どうした? 弁慶?」
弁慶:「ふふふふふ」(←すごく怖い…)
リズ:「こ、これは…っ」
景時:「どどど、どうしたんだい?もしかしてまさか、王様だった、なんてことはないよね」
弁慶:「おや、どうして僕が王だとわかったんでちゅ? でも困りまちたね。何を命令ちゅればいいのか? ふふふふ」
将臣:「おい、言葉と表情が伴ってないぞ」(←ウケました…)

ヒノエ:「今まで負け続きだからねえ。ろくでもない命令を考えているんだろう。人の弱みが握れるような、えげつないヤツを」
景時:「わわわ。将臣くん、ヒノエくん、まずいって」

弁慶:「それは楽しそうでちゅね。どんなことを話してもらおうかな。みんなの心の中にしっかりと刻まれているような」
敦盛:「刻まれている…」

弁慶:「じゃあ1番から順に好みの女性の話でも聞かせてもらいましょうか」

譲:「順に…って、全員ですか?」
九郎:「弁慶、お前、悪趣味だぞ」
弁慶:「そうでちゅか? 誰か1人当たる方が不公平だと思いませんか?」
九郎:「思わんぞ」
将臣:「当然だ」
譲:「そうだ、そうだよ」
弁慶:「そうですかね」

リズ:「みな、静まりなさい。王の命令は絶対だ。覆すことができぬ」(←ツルのなんとか…)

白龍:「どうしてそんなにいやがるんだ? 好きな人の話をするだけなのに」
ヒノエ:「心の内に秘めてこその花、ってことだよ。ところでオレは2番なんだけど、最初はどいつだい?」

将臣:「お、俺だ」
弁慶:「それでは始めていただけまちゅか? でないといつまでたっても、この話し方のままになってしまいまちゅから」
将臣:「わかったわかった。でもなー。正直考えたことないんだよな。好きになったヤツが好みのタイプって答えじゃダメか?」
リズ:「タイプ…」

弁慶:「最初からいきなりぼかした回答ですね」(←冷静なところが笑える…)
将臣:「しょうがねえだろ」
ヒノエ:「じゃあ、その好きになった子ってどんな人なんだい?」

将臣:「わりぃ。それも特にないからな、答えようがないぜ」
弁慶:「1人も? 全然いないんですか?」(絶句)

将臣:「なんだよ、その天然記念物を見るような目は」
ヒノエ:「ちょっと意外な回答だね。初恋話くらい聞けるかと思ったんだがな」

譲:「好きになった人なんて特にいない、か。よく言うよ」
将臣:「なんか言ったか? 譲」
譲:「別に? 鈍感すぎて呆れただけだ」

将臣:「そうか? ウソいってもしょうがねえから、正直に言っただけだぜ?
 だけど、しっかりしてて、どこか抜けたようなヤツは放っておけないな。
 好みのタイプってお題とはちょっと違うけど、こんなんでいいか?」
弁慶:「ええ。ありがとうございます。次はヒノエでしたね」

ヒノエ:「オレも好きになった子がタイプかな」
敦盛:「ヒノエ…。タイプという言葉を知っているのか?」
ヒノエ:「いや。でも使い方は合ってるだろう?」

弁慶:「意外ですね。君のことだから、すべての女性、が好みかと思いましたが」
ヒノエ:「人聞きの悪いこと言うなよ。それじゃ単にオレが見境いないみたいだろ?」
譲:「違うのか?」
ヒノエ:「そんなはずないだろ? いろいろオレは考えてるぜ?」
九郎:「将臣より詳しい話が聞けそうだな」

ヒノエ:「オレが好きになるからには、当然可愛くて話してて退屈しないような子がいいかな。
 なにかに一生懸命になっている姿も好きだよ。華奢な後ろ姿もぐっとくるねえ。それから」
景時:「まだあるのかい?」
ヒノエ:「ああ、まだまだ。こんなもんじゃ全然満足できないぜ」
将臣:「お前、どんだけ贅沢なんだ」(←今回の1番)

弁慶:「さぁ。ヒノエを放っておいて次に行きましょうか。えっと、3番は」
九郎:「俺だ」

弁慶:「そういえば、九郎からこういう話を聞いたことはないですね」
九郎:「当然だ。今は戦の最中だろう。こんなことを考えている場合じゃないからな」

景時:「まあまあ。今日ぐらいはいいじゃない」
九郎:「わかった。この遊技に参加したときから、どんな命令だろうと、従う覚悟はできている。
 強いて言うなら、武人の妻としてふさわしい、清廉な女性だろうか」
敦盛:「やはり九郎殿は、己がなすべきことを考えているのだな」
九郎:「当然だ。武家の男として生まれた者の義務だからな」

白龍:「そうか。九郎は慎ましくてしとやかな女性に魅力を感じるんだね」
九郎:「そ、それはっ」
ヒノエ:「武人の妻云々はともかくさ、女の子のどんなところにぐっとくるんだよ?
 こんな仕草が好きだとか、いろいろあるだろ?」
九郎:「し、仕草だと? なんだそれはっ。答えられるか! 考えたこともない」(←焦りすぎて声が裏返ってます…)

リズ:「ならば。今、考えてみなさい」
九郎:「先生……っ」(←絶望…)

将臣:「ま、王様の命令だからな。覚悟決めろって」
九郎:「だが、考えてもよくわからん。…違っているかもしれんが、同じ夢を見つめていられる相手、だろうか」
譲:「夢?」

九郎:「明るく、くじけず、どんな困難にも向かっていける人だ。
 そういう相手とならば、なにがあっても2人で未来を切り開いていける。そんな気がする」
弁慶:「3人目にしてようやくちゃんとした答えが出ましたね」

ヒノエ:「同じ夢を見ていける人ね」
九郎:「な、なんだ。お前たちが考えろというから考えたんだぞ。いいから、次いけ、次」
景時:「あはは。そんなに照れなくても。あ、次、オレなんだ。言ってもいい?」
弁慶:「ええ、お願いします」

景時:「オレは元気で明るい子がいいな。一緒に居るだけでウキウキして、幸せになれる人っているでしょう?
 毎日その人の笑顔を見るだけで、今日も頑張るぞって思えるような。優しい笑顔が素敵な子。
 オレはやっぱりそういう子がいいな。うん」

敦盛:「『やはりそういう子』、とは、すでにその相手が居る、ということだろうか?」
景時:「え?」

九郎:「ああ、それでなのか。妙に実感がこもっていると思ったぞ」
景時:「え??」

譲:「でも、それでいくと、毎日会っているんですよね」
弁慶:「しかも笑顔を見ているそうですから。相当親しい相手ですよ」(←三段論法)

景時:「いや、これ、好みの話でしょ?」
ヒノエ:「朔ちゃんなら知っているかな?」
景時:「ああ、ヒノエくんまで! いないってば、ホント」

将臣:「具体的すぎるんだよな。内容が」
景時:「そんなっ。えっと、えと、あ、あああーー、あとは、オレを好きでいてくれる子。そんな子、募集中」

弁慶:「ふふ。なんだか可哀相になってきたので、そろそろ止めてあげましょうか」
景時:「もう、みんなヒドイよ!!」(泣)

リズ:「次は…。譲か」
譲:「はい…。えっと 俺は」
ヒノエ:「お前はいいや。聞いてもつまらないし」
譲:「なんでだよ」
ヒノエ:「今更聞くまでもないだろう?」

譲:(なっ。くそ、ヒノエのヤツ。聞くまでもないってなんだよ。
 お前がわかってたって、1番わかってほしい人には気づかれていないのに。
 そう…。あの人は全然知らない。子どもの頃のままのキレイなまなざしで、まっすぐ俺を見つめて。
 俺の心を揺さぶる。純粋で罪深い人(ため息))

白龍:「譲? 話さないのか?」
景時:「どこまで行っちゃうの? そんな端の方にいないで、こっちに来いって!」
譲:「俺の勝手だろう、ほっといてくれ」

弁慶:「ヒノエ、君のせいですよ」
ヒノエ:「へぇ。譲がそんなに話したかったなんて、悪いことしたかな」

将臣:「話さずにすんでむしろラッキーじゃねえか」
景時:「ホントホント。オレみたいに変な汗をかかなくて。羨ましいよ」

譲:「はあ。なんだかバカバカしくなってきた。話せなくて怒る理由も確かにないよな」
ヒノエ:「そうだろう? オレに感謝しろよ」
弁慶:「ヒノエ。君は反省してください」(←直前の『ヒノエ』の呼び方と違う。宮田さん、神)

敦盛:「あ、あの、次は私なのだが」
将臣:「敦盛の好みか。想像つかねえな。どんなだ」
敦盛:「それが、申し訳ありません。考えても思いつかなくて」

景時:「敦盛くんもすごく理想が高そうだよね」
敦盛:「え?」
ヒノエ:「昔からちょっと可愛い子がいても全然なびかないもんな」
敦盛:「そうだろうか? そんなつもりは無かったのだが」
弁慶:「ヒノエ。昔って…。10歳にして女の子になびく君のほうに問題があるとは思いませんか?」

敦盛:「こうでなければいけないという条件を考えたことはない。だが、美しいと思う人ならばいる」

何人か:「お?」

景時:「そんな告白しちゃっていいのかい?」
敦盛:「かまわない。暖かく優しい手をした人だ。彼女はきっとこの世界のどんな存在よりも美しい」

白龍:「次は私の番だね。私が好きなのは…」
譲:「お前に聞く必要があるとは思えないけど」
白龍:「どうして? 私も好きな人のことを語りたい。穏やかな微笑みも。優しい瞳も。涼やかな声も。
 みんなみんな大好きだから。好きな人と居るだけで、毎日がとても幸せなんだ」

将臣:「マズい。これは終わりそうにないな」
譲:「だから止めようとしたんだっ」(←兄弟タッグ)

弁慶:「最後はリズ先生ですね」
リズ:「うむ」

譲:「とはいっても、リズ先生に女性の話をお願いするってのも…」
ヒノエ:「ああ、なんか無縁そうだよな。こういう俗っぽい話」
将臣:「興味とかなさそうだし」
景時:「その禁欲的な感じがリズ先生らしさ、だよね」

リズ:「まぶたに焼き付いた女性ならば、いる」

九郎:「…っ! 先生に??」(絶句)
譲:「それは一体誰なんですか?」

リズ:「出会ったのは、私がまだ幼い頃。一瞬の出会いだったが、あのときのことは今でも忘れることはできない。
 まぶしいほど鮮烈に、私の心を今も支配している」

九郎:「先生が…。一目惚れ?」
弁慶:「しかも、どうやら年上のようですね」
ヒノエ:「やるねえ。リズ先生。さすがのオレも驚いたよ」

敦盛:「あの、その女性はどのような方だったのですか?」
リズ:「強く、優しい人だった。私はあの人の背を追って目指し、歩み続け、今なお追いつけないでいる」
九郎:「……っ。先生」(←号泣)

弁慶:「いいお話が聞けましたね。さ、では次の王を選びましょう」
将臣:「なんだ? お前はやっぱり言わないのか?」
弁慶:「ええ。僕が話す必要はありませんから」
ヒノエ:「おい、弁慶。お前一人当たらないなんて不公平じゃないか」
白龍:「弁慶がさっき言っていたことだね」

敦盛:「ならば、私の分を使おう」
リズ:「保留にしていた命令か?」
九郎:「さあ弁慶、これでお前も話す義務があるぞ」
敦盛:「すまないがお願いできるだろうか?」

弁慶:「仕方ありませんね。聞いたところで面白いことなんてないですよ。僕は…。そうですね。心優しい人が好きかな」
九郎:「っ。相手を思いやれる女性というのは確かに理想的だな」
弁慶:「ええ」
ヒノエ:「それから?」
弁慶:「それだけですよ。僕は多くを望みません」
ヒノエ:「よく言うよ」

九郎:「しかし弁慶。それでは漠然としすぎていないか?」
弁慶:「そうですか? 困りましたね。これ以上何を言ったらいいのか」

敦盛:「たとえば鳥の雛を、巣から落ちて凍える雛を救い…、手のひらで温めてあげるようなそんな女性だろうか?」
弁慶:「雛?」
敦盛:「違うだろうか? 漠然としているというなら、こうして例を挙げれば答えやすいのではないかと思ったのだが」

弁慶:「困ったな。王様に気遣われるようでは、話さないわけにはいかなくなってしまう。
 もっと詳しくと言うなら…。人の痛みを自分のことのように感じられる人。でしょうか。
 真っ直ぐで、清らかな涙を見ると心動かされます」

将臣:「へぇ」
景時:「ん、なるほど。そういう姿を見るとぐっとくるというのはわかる気がするよ」
弁慶:「ふふ。わかってもらえるのは嬉しいですね。できれば君たちが僕の恋敵にならないといいのですが」

九郎:「そんな心配はいらんだろう。聞いてみると、好みもみんな全然違っているようだ。まさに十人十色だな」
白龍:「人の輝きは不思議だね。水に映る月の姿のように、違う美しさが見える」


(場面変更)

知盛:「月、か…」
重衡:「見るほどぞ、しばしなぐさむ、めぐりあわむ、月の都ははるかなれども、か。少し月に酔ったかな」

知盛:「月見には早いだろう」
重衡:「兄上。帰ってらしたのですね。今宵は美しい月でしょう?」
知盛:「いつもと変わらんが」
重衡:「そのように言っては月が泣いてしまいますよ。…そう、泣いて…」
知盛:「ん…?」

重衡:「今の私には、その涙をぬぐうことさえできない。月の都はそれほどに、遠い。
 兄上。私の心をとらえて放さない人がいるんです」
知盛:「お前が一人の女にか?」
重衡:「おかしいですか? そう、きっと私はおかしくなってしまったのです。あの夜、月と言葉を交わしたときから。
 胸に痛みを感じるのも、思えばあのときからです。忘れることすら許されない。残酷で甘美な痛みを」

知盛:「楽しそうで結構。中将殿は月にでも恋にでも酔うがいいさ。さて」
重衡:「兄上? 兄上も囚われてみればわかります」
知盛:「くっ。それは楽しみだ。だが、俺を捕えることができる女がいるとでも?」



(場面変更)

九郎:「そういえば、こういう話をしたことは今までなかったが、みなを知るという意味では悪くないかもしれないな」
将臣:「へぇ。うちの連中はしょっちゅうこんな話をしているけどな。愛だとか恋だとか。お前のところは違うんだな」
九郎:「うちで? 兄上がか? 色恋の話をしてる姿など、全く想像できんぞ」

景時:「んっ」(←のけぞり中)
弁慶:「九郎の兄上は厳しい方ですからね。なかなかそういう話にはならないかもしれません」
景時:「そ、そうだね。想像つかないよね」

景時:(そう思っていられる方が幸せだよね。羨ましいよ。その場に居合わせずにすんで。オレなんてしょっちゅう…)

景時:「以上が白龍の神子に関する報告です」
頼朝:「怨霊を封印する神子か。一度直に話してみたいものだ」
政子:「まぁ。あなた、その娘に会いたいとおっしゃいますのね」
頼朝:「政子」
政子:「あなたの心を占めるのは、いつでも私だけで十分ですわっ。ねえ、景時。そう思いません?」
景時:「はぁ」

頼朝:「何を下らぬことを案じておる」
政子:「くだらなくありませんわ。大切なことですもの」
頼朝:「下らぬ心配だ。お前ならば、私を譲り渡したりしまい。何者が現れようと」
政子:「まあ。ええ。そうですわ。誰にも渡したりいたしません。あなたは私だけのもの。
 誰かに渡すくらいなら、食べてしまった方が良いわ。あなたの魂ごと全部。私のものにするの」
頼朝:「ふむ。怖い女だ」
政子:「あなた」
頼朝:「景時、下がってよいぞ」
景時:「ぎょっ、御意」(←裏返っています…)

景時:(あの2人の語らいを聞いていると、寿命が5年くらいずつ縮んでいくような気がするんだよねー)


九郎:「兄上は武家の当主だ。色恋の話にウツツを抜かすことはないと思う。謹厳な方だからな」
景時:(ふぅ。知らないのが1番幸せだよ)

ヒノエ:「なあいいから、早く次の王様を決めようぜ。姫君たちが温泉から出てくるまでにもう1回くらいできるだろう?」
将臣:「ははっ。なかなか面白いだろう? 王様ゲーム」
ヒノエ:「王様にならなきゃ面白くないけどね」

九郎:「ということは、ヒノエは王狙いか」
敦盛:「命令は事前に考えておいた方がいい」
ヒノエ:「心配すんなって、もう考えてあるからさ。へへ、しかもとっておきのやつをね」

譲:「絶対に、ヒノエだけは王様になりませんように」
将臣:「あー。そうは言っても、こればっかりは時の運だからな」
九郎:「よし。ではこれで最後だ」

全員:「せーのっ…っ。王様だーれだ」

?:「…あぁ」(落胆の声←多分、譲くん…)








# 4回聞いて、書きました(≧▽≦)
# 弁慶さんの黒い笑い声がサイコーです。
# 景時さんの慌てっぷりも、敦盛さんの冷静なナレーションも。
# 将臣くんの、『お前、どんだけ贅沢なんだ!』にも大ウケ。
# とてもとても楽しませてもらいました(≧▽≦)
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