*...*...* Growth 4 *...*...*
 強張った身体が、一気に弛緩する。
 腕の中の彼女は苦しそうに眉をひそめ、肩で息をしている。

 まだ、成長段階の途中にあるのだろうか。
 香穂子の身体は、豊かな実りの前の、華奢な身体だ。
 肉の丸みに使うための力は、背をを伸ばすのに使われたらしい。
 弾力のある身体は、こちらがこうした行為を行うのに、背徳の思いさえ浮かばせる。

 香穂子は私の重みを全身で感じながらも、真剣な表情で問いただしてくる。

「私、お、幼いですか?」

 ヴァージニティなどいうものは、ただの面倒なモノ、という認識しかなかったのに。
 まだ、誰にも汚されていない身体は、ひどく私を劣情に火を付けていく。

 すっぽりと私の手に収まる白い胸も。
 ぴくりと震えるたびに、赤味が増す艶のある肌も。
 いや、それらを形作っているのが香穂子だから、だろうか。
 ますますこの子が好きになる。

「いや。とても魅力的だがなにか」
「だって、私の身体が子どもっぽいの、自分でもわかってるんだもの」
「じゃあ。私がどう言えば、君は信じるのだろうか」

 さきほどの情事も。
 一時よからぬコトを考えていたのだろう、身体がすっと冷たくなったが。
 香穂子はなおも、あれこれとなにかよからぬことに思いを巡らせている様子だ。
 彼女の心情が手に取るようにわかるのも、年が離れていることの特権かもしれない。
 何度も愛撫を繰り返すうち、うなされるように何度も同じ言葉を口に出した。

『熱い……。熱いの』

 確かに私の分身も、彼女の熱い肉片に強く締めつけられている。
 私はふと疑問に思った。
 ── まだ、熱いのだろうか。

「香穂子。すまない」
「はい……」

 私はいったん自身を彼女の中から抜き取ると、サイドテーブルにあったグラスに手を伸ばす。
 先ほどまで私が飲んでいた水割りは、不満げにグラスに雫を付けている。
 私は、グラスを傾けると数センチの大きさになった氷を口に含んだ。

 一度身体が離れていったことが不安だったのだろう。
 香穂子は振り返ると、切なそうに私を見上げた。
 反論する余地を与えないようにと、私は性急に香穂子の膝を割る。

「なに……。あ。あ!」

 そして、淡い茂みを自分の顔の前に持ち上げると、秘部に舌を這わせ始めた。
 ときおり氷を宛がって彼女の反応を見る。
 花びらのような薄いピンク色だった彼女の秘部は、やがてさっき食べたサーモンのような濃い色になった。

「君は自分のこの場所を見たことはあるだろうか?」
「ううん……。ない、ですっ。いや……。恥ずかしいから、やめて……」
「教えてあげよう」
「いや。見ないで……っ」

 彼女の静止も聞かず、私はそっと彼女の2つの扉を開く。
 淡いピンクのグラデーション。その奥に、ようやく指が入るかどうか、といったくらいのスリットがある。
 そっと指を差し込むと、ヒクヒクと返事をする。部屋中に甘い香りが広がった。

「生き物みたいに、呼吸をしている」

 そこで私は溢れてきた蜜を吸い上げる。

「あっ」
「鏡を当てたら曇りそうだ」
「やぁ……っ。あ、あ……っ」
「成熟した、1人の女の子だよ。君は」

 濃い桃色の頂点に、芯を持った突起が起立している。
 私は唇で甘噛みすると、その先端に舌を這わした。

「や……。熱いの。壊れちゃう」
「……そうか」

 達したばかりで、また、達するのも初めてで、香穂子は自分の身体をどうしていいのかわからないのだろう。
 私は口の中の氷を、ぐっと秘所に押し込むと、そのまま自分の分身を突き刺す。
 角が取れた氷は、私が腰を振るたびに、香穂子の奥へと入り込んでいく。

「あ……っ。いやぁ」

 溶けた氷の水分と、香穂子自身の甘い蜜がシーツに丸い染みを作っていく。
 香穂子は小さな子のように首を振ると、不安げに私の首にしがみついてきた。

「君の懇願する顔が見たいと思ってね。……言ってごらん? 私が欲しい、と」
「え……?」
「求めてみるんだ。私のことを」

 私は香穂子を抱き起こすと、自分の膝の上に乗せる体勢になって、彼女の顔を見上げる。
 溶けきったような優しい顔は、やがて微笑むと、ふわりと私を抱き寄せた。

「……吉羅さん。大好き」
「香穂子?」
「私、吉羅さんに、なにをしてあげられるのか、わからないけど……」

 優しく髪をかき上げられる。華奢な指の感触は、私に幼い頃を思い出させる。
 なにも。何一つ、不安も不満もなかった、頃。

「だけど、大好きです。あの……。お誕生日、おめでとうございます」

 額に柔らかな感触が降ってくる、と思ったら、それは香穂子の唇だった。
 私が香穂子を見上げるという、普段はあまり経験できない視線の高さに、姉を思う。

 ── 似ていると思っていたが、これほどとは。

『いいのよ、もう』
『姉さん……』
『私は、私の生き方を後悔してないの。もう……。いいのよ?』

 優しい声が耳朶を伝う。
 私は思い切り香穂子を抱き寄せた。

「抱いた女の反応を、今までさほど気にしたことはなかったが」
「はい……」
「どうしてだろうな。君だけは気になる」

 熱いと言われたとき、嬉しかった。
 この子は生きている。生きて、私のそばにいるという事実を感じることができたからだ。

 今までの間ずっと抑え続けていた感情が、今、この子に対してゆるやかに開かれていく。

「私は男だから……」
「吉羅さん?」

 一度先端まで分身をこれ以上なく奥まで押し込むと、私はさらに言葉を繋ぐ。

「── 想いは、行動でしか表せない」

 なんでもない1人きりの夜。
 ふと、香穂子の様子が気になることがある。
 今まで、そんな足枷のような存在には気づかなかった。
 もし気づいたとしたら、今までの私なら、なるべく距離を置くことを考えただろう。

 だけど、今は、違う。
 気がかりな存在である香穂子を、手放そうとは思えない。
 早く、1人前の大人に成長してほしい、という気持ちと、ずっと、私のことを頼って近くにいたらいい、という気持ちが交錯する。

「香穂子……」

 ふたたび香穂子をベッドに押し倒して、今度は、お互いの行き着く先を貪欲に求める。

 言葉よりも確かなもの。
 今、共にここにいる、ということ。互いの体温を交換し合う、ということ。
 言葉の先に行動がある、ということを伝えるために。





 終焉近くに、私はふとアルジェントの気配を感じた。
 音楽の加護、か。そんなものはさしてありがたいと思ったことはないが。
 明日、香穂子を家に帰した後、私は雑用を片付けに学院に向かうことを思い出す。


 今年なら私は、アルジェントの祝いの言葉を、素直に聞けるかもしれない。
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