『だから私も、君の前では素直になることに決めた』

 そう告げてから、約1ヶ月
 日々、私も知らなかった私本来の部分が、香穂子の前では溢れるように出てくるのを感じている。

 あと1年もしないうちに、彼女は星奏学院を卒業する。
 この勢いでヴァイオリンの実力をつけていけば、彼女の希望する音大は合格圏内。
 海外留学も視野に入ってくる。

 そこでいつも私は、自問のような問いかけに囚われる。
 ──── 私は彼女を手放すことができるのだろうか?  
*...*...* Star 1  (Kira) *...*...*
 初めて彼女を抱いたのは、彼女が高3のクリスマスの時だった。
 男という生き物を肯定する気はないが、女を抱きたい、と思ったそのときに、
 1ヶ月先や、3ヶ月先、半年先も、その女を抱くことに、責任を持っているわけではない。
 肌が合う、というのだろうか。
 週に1度、または2度の香穂子の逢瀬はかれこれ2ヶ月近く続いている。

 ただ、今までの経験から、これほど長く続くとは考えていなかったのは事実だ。

 たいていは、週末。
 翌日起きる時間を気にしなくてもいい休前日に、食事と、そしてホテル。
 そして月に1度は、私のお気に入りの楽団のコンサートに誘う。

 1つずつ、好みの音を教えること。伝えること。
 香穂子は私の押しつけに近い助言を、従順に受け止め、自分の音に反映していく。
 そして、1週間も経つ頃、少しだけ、私好みの音になっているのを知る。
 そんな毎日が、ますます私を有頂天にさせたと言ってもいい。

 2月のある週末、私と香穂子は、ともに都内のコンサートを聴いたあと、こうしてホテルの一角に落ち着いている。

「今日のコンサートも素敵でした! N響はやっぱり素晴らしいです!!」
「気に入ってもらえたようで、それはなにより」
「吉羅さんは、N響がお好きなんですか?」
「いつ、どんな時も安心して聴いていられる、という点では高く評価しているね。
 オケは生身の人間が作る音楽だ。その日の状態によっては、メンバーの出入りもあるだろう」
「はい」
「この楽団は、個々の実力に差がない。ブレもない。
 その点が安心感にも繋がり、また、面白味に欠ける、という見解にも繋がる」

 香穂子は目を輝かせて私の話に耳を傾ける。
 音楽というのは、残念なことに、幼少時の教育と環境が大きなファクターを占めている。

 彼女がヴァイオリンを始めた動機というのは極めて異例。
 幸いなことに、ヴァイオリンの実力は順調に身につけているものの、音楽の造詣という点では至らないところも多い。
 そこで私が利用しようと思ったのが、彼女の耳の良さだった。

 ──── この子なら、耳を使うことで、飛躍的に能力を伸ばせるのではないか。

 思惑はどうやら、想像以上に上手く彼女に作用したらしい。
 ここしばらくの進歩を見る限り、私の判断はあながち間違っているわけでもないようだ。

「香穂子。こっちにおいで」
「吉羅さん?」

 幾度となく同じことをしているにも関わらず、相変わらず香穂子はこの瞬間に緊張の色を浮かべる。
 普段なら、香穂子が私のそばに来るのを待っている余裕があるというのに、今日の私はおかしい。
 今夜は私から香穂子を抱き寄せると、赤い髪の間にある白い耳に噛みついた。

「……今日も君を抱きたくて仕方がなかった。コンサートの途中で席を立とうかと思ったくらいだ」
「そんな、吉羅さんが……?」
「先週は仕事が立て込んでいて、君を抱けなかったからだろう。自分を押さえ込むのが大変だったよ」

 耳への愛撫に、香穂子はくすぐったそうに身体をよじる。

「なんだか、吉羅さんって考えてた以上に子どもっぽい、です」
「子どもっぽい?」
「はい。……だって、私より、10歳以上も年上だから、その……。
 最初はお話できるかな、とか、私が失敗したらどうしよう、とか、そういうことばかり考えてたから」

 香穂子は私の胸の中で深く息を吸い込むと、顔を上げる。
 嬉しそうに細められた眼の中に、私も見たことがないような、自分の甘い顔が映っているのがわかる。

「やれやれ。子どもっぽい、か。……君だけに見せる私の一面だろうな」
「私だけ?」
「まあ、おいおい慣れていってもらいたいものだね」
*...*...*
「吉羅、さん、また……?」
「ああ。すまないが、私は君に飢えているのでね」

 香穂子を2度の高みに乗せたあと。

 私はふっと息を吐くと、改めて腰を進める。
 香穂子の秘部に触れた瞬間、自身の先に蜜のぬめりを感じる。
 続いて、先端が入り口を突破したのがわかった。
 少しだけ抵抗を感じたものの、あとは難なく私を受け入れていく。
 私をもてなす部分は、一気に根本まで飲み込んでいく。
 間近から彼女の秘部を認めた私は、花びらがきゅっと音を立てて咲き開くのに目をみはる。

「君は、熱いな」
「吉羅さん、だって……。このままじゃ、私、また……っ」

 10回も出し入れしないうちに、香穂子の全身が震え始め、蜜が滴り始めた。

 彼女が感じる部分。
 そのすべてを見つけて、同時に刺激を重ねたら、彼女はどこまで上り詰めるのだろうか。
 彼女の上に乗っていた私は、ふと動きを止めて、彼女を向かい合わせに抱きかかえる。

「あ、あ……っ」

 自分より、やや上にある彼女の顔は、普段見慣れている角度とは違う。
 彼女のすっきりとした鼻梁。赤みを増した唇。
 それに、小さくて持ち上げやすいあごと、そこから続く白い首。

 まだ何者にも汚されてない彼女の身体。それに手を入れてここまでにしたのはこの私だ。
 そう考えるだけで、またどくんと背筋に快感が走る。

「また、今日、君の感じるところを見つけた」
「吉羅さん……?」

 私は香穂子の腰を掴むと、ゆっくりと上下に動かす。
 そして下になった瞬間、思い切り自分の腰を揺すり上げた。

「や……っ!」
「ここだ。こうすることで私の先端が、君の最奥を刺激するらしい」
「いや、もう、ダメなの、私……っ」

 彼女の突起は熱く、私自身を融かす『ぬめり』のスイッチになっている。
 耐えきれなくなったのだろう。
 朱く腫れ上がったスイッチは、2枚のふっくらした扉から、貝の舌のようにぺろりと顔を覗かせた
 そこも刺激するようにと、私は彼女のヒップを両手に掴み、自分の方へとたぐり寄せる。

「君は……」
「ん……、なに……?」
「ここまで私を翻弄して、どうするつもりなのかな」

 荒くなる息遣い。
 そろそろ、私も限界が近いのかも知れない。

 彼女の両足を抱え上げ、可愛らしいヒップの谷間を指で開く。
 不意に、小さな菊の蕾が指に触れた。
 私を受け入れている部分から溢れた蜜が、谷間を伝って、ここまでやってきたらしい。

「いい身体をしている。……飽きない身体だ」
「吉羅、さん……っ。ダメ、そこは……っ」
「こんなに私に反応して」



 蕾はぷるん、と私の指を押し返す。
 つぷり、と人差し指の第一関節が香穂子の中に入った瞬間、香穂子は全身を震わせた。
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