*...*...* 渚(後編) *...*...*





 部屋に入って……の様子を窺う。
 は、ドアの前に立ちすくんだままだ。

 海辺で抱きしめて以来、全く口を利かなくなった……。




……。どうする?」

 弾けるように、こちらを見る。
 その緊張したような、怯えたような表情も、今の俺を煽るばかりで。





「俺に抱かれるの、イヤ、か?」
「…………」
「……黙ってちゃ、わからない」

「……っ」
「……言えよ」



 緊張してガチガチになっているに、ひどいこと聞いてると、思う。
 ……を壊してしまいたいという思いは、もう抑え切れない……けど。




「……安心しろ。おまえがイヤなら、何もしない。
 ただとなりで、一緒に眠るだけでいい……」


 俺はの前に立つと、いつものようにの頭をクシャっと撫ぜた。

 すると、とん、っと、俺の胸に頭を預け、はささやくような声で言った。


「……コワい、の。わたし……」
「……コワい? どうして?」


「……わたし、……あの、こういうこと、初めて……、で。
 いろいろ不安、で……コワくて……。
 そ、それに、わたし、胸もないし……、恥ずかしい、ばっかりで……」

「……恥ずかしい? ……そんなことない。
 セックスなんて、自分が相手にしてあげたいと思うこと、すればいいんだ」

「……で、でも、わたし、どうすればいいのか、わからない、し……」
「……俺が、教えてやる」



「……でも……!!」
「……もう、黙れよ」


 更に言い募ろうとするの唇を強引に覆う。




 抑え切れないこの思いが伝わることを祈りながら。




 俺はの少し落ち着いた様子を確かめると、
 そっと抱き抱えて、ベットに連れて行った。
*...*...*
かすかに震える身体。それはとても小さくて。
一瞬、俺はとてもひどいことをしているのではないかという気さえしてくる。




 むさぼるようなキスをしながら、
 俺はワンピースを脱がしていった。

 あらわになったの胸。
 そこは小さな桜の花が咲いているようにきれいで……、  俺は思わず息を呑んだ



「……おまえ、本当に、きれいだな」
「……やだ、もう、見ないで……」


 はいたたまれないような様子で、顔を背ける。



「……どうして? おまえ、すごく可愛い」


「……胸、小さい、もん……」
「……そうか? ……俺にはちょうどいいけど」


 軽く胸をもみしだきながら、何度も名前を呼ぶ。
 しっとりと汗ばんだ肌が、俺の手に吸い付いてきて、
 頑なだったの身体が、少しずつ俺に馴染んでくる。





 首のあたりをさまよっていた唇がだんだん下へとおりてくる。


「……んっ……」


 首、鎖骨、ニの腕、胸……。
 おまえを形作る全ての線に唇を這わせる。

 そのたびに湧くあえやかな声。こぼれる吐息。





「ちょっと、痛いかもしれないけど……。
 痛かったら、俺の肩、噛んでいいから」
「……そ、そんな! ……珪くんに傷がついちゃう……」




「……いいんだ。おまえにつけられるなら」

「珪くん……」





 俺はの手を握り締めながら、ゆっくりとの中に入っていった。






 そこは想像した以上に、熱くて、キツクて。


、……温かいな、おまえ……」





 必死に耐えているがこの上なく愛しくて。
 俺はの最奥まで攻め立てた後、自身の熱を解放した。
*...*...*
「……悪い……。痛かったろ?」


 口ではそんなことを言いながら、
 全然悪いと思っていない自分がいる。



「……ううん。……珪くんがくれた、痛み、だから、平気だよ……?」

……」



 涙でいっぱいの目をしながら、おまえ、
 こんなつらいときに、どうしてそんなこと言えるんだ?




「……ずっと怖かったの……。わたし。
 珪くんとこうなることで、今までの3年間が  崩れてしまうような気がして……。
 でも、そうじゃないんだね。
 また一つ、何かが始まったんだね……。
 ……それが何かは、わからないけど……」




 一つ一つの言葉を、ゆっくり考えながら紡ぐ


 あどけない童女のような赤い唇。
 未だに元に戻らない荒い呼吸。
 俺を映す潤んだ目。




 ……もう、止められない。
 おまえを愛しい、と想う気持ち。
 何度でも俺を刻み付けたい、と想う衝動。




「ああ、そうだな……」


 そう言うと、俺は再びの身体を抱きしめた。
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